ラベル いまい内科クリニック院長・今井信行さんインタビュー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2009年7月4日土曜日

医療と介護のふたつの視点で地域を支える

在宅医療にかかわるようになってから、今井さんの気がかりは、がんなどの難病になると患者が自宅以外に出向いたり、面倒を見てくれる場所が他にまったくないという現実についてでした。
 もっと地域ぐるみでひとりひとりと向き合える関係がつくれないだろうか。そこで平成20年10月、クリニックの近くに民家を購入し、「在宅療養支援ハウス 中州・有隣荘」と呼称して、デイサービスを開始されました。つい最近まで老夫婦がお使いになっていた二階建ての日本家屋です。施設とは違う、暮らしのぬくもり、生活の時間が自ずと伝わってきます。



「有隣」とは、論語の里仁篇の「徳不孤、必有隣」という言葉から転じて、デイサービスを始めるにあたり、“独居であっても年を重ねても、病気や障害を患っていても、あなたは孤独ではない。”というメッセージをこめて命名されたもの。日々に営みを綴ったブログも始まっています。

http://yuurin-kunpfukai.blogspot.com/

有隣荘は医療法人の経営ですので、医療的な配慮も充分可能であり、点滴、胃ろうなど医療処置の必要な方にも対応できます。患者さん本人にはデイサービスでの食事や入浴で寛いでいただきたいと思う一方で、看病を続ける家族の方にもレスパイトに利用して欲しいとのことです。そして、何よりも生きがいづくりをたいせつにしておられ、食事会をしたり、講演会を開催したり、また最近では花壇も作られ、トマトやズッキーニなどを植え、皆さんで成長を見守っているそうです。
 今井さんは、住み慣れた町でいつまでも住み続けたいという願いを実現するために、これからも生まれ育った町で、医療と介護の両面の視点を持って来るべき高齢社会に備えたいと考えておられます。どんな街にでもある小さなクリニックかもしれませんが、ひとりの医療者の願いが、こんなふうに地域に広がっていくことに希望を感じました。

セミナーの当日は、今井さんとご一緒に在宅ホスピスケアのこれからについて考えて行きたいと思います。(浦嶋偉晃)

2009年6月30日火曜日

勤務医が家庭医になって見えてきたもの

今井さんは、開業当初より透析医療を充実させるために注力してきました。クリニックのスタッフが増えて体制が整ってくると、透析室の中で行う医療だけでなく、段々とそれぞれの患者さんの自宅での生活はどうなっているのだろうかということが気になって来られました。これは透析という医療が患者さんの生活に深く根ざしていることから、必然的に「生活の中での医療」という視点に関心が集中したとのことです。
 また病院勤務の時代は患者さんを医療の面から捉えるのみだったという事でしたが、開業医として日々の患者さんの生活を間近に見ることで、次第に患者さんの生活全体を診る開業医の視点が育ってきたのかもしれないと仰っておられます。
  今井さんは志して在宅ホスピスケアを始めたわけではない、終末期ケアを断る医師もいるが、普段の診療の延長だからと断ることをしなかった為だと仰っておられます。
 また開業医になって、患者さんや死に対する意識が随分と変わられたそうです。
今井さんはかつて病院の勤務医をしていましたが、病棟では末期患者の方がある日突然に姿を消すが、何事もなかったかのようにその翌日には別の人が同じベッドに横たわっている。死は通過していくだけで、立ち止まったり、ふりかえることがない。それが「病院の死」でした。
しかし開業医になって、患者さんの家々に往診するようになって見えてきたものは、当たり前の「暮らし」でした。勤務医時代は、患者さんをその人の暮らしの中で見つめることがなかったといいます。そして多くの患者さんを往診する内に、次第にケアする側の医師が、逆に患者さんにケアされているという「ケアの相互作用性」を感じてこられたそうです。重症の患者さんから、いろいろなことを教えて頂くことができると気付かれたそうです。


今井さんは、こう言います。
 「私たち医者は医者の仕事しかできない。その意味では私も勤務医時代と同じで、やることもやれることも変わりありません。でも家庭医となることで患者さんの生き方や死と向きあう姿勢は間違いなく変わったと思います」(浦嶋偉晃)

2009年6月28日日曜日

住み慣れた町でいつまでも

 エンディングセミナー「”みとりびと”は語る」(7月25日)の話題提供者・いまい内科クリニック院長の今井信行さんにお会いする機会がありました。

 今井さんは平成12年に、生まれ育った宝塚市でいまい内科クリニックを開院されました。
 昭和59年に医院を開業されていたお父様が腎臓病を患われていたこともあって、今井さんは高血圧・腎臓病を専門とされ、クリニックには透析施設を備えられました。透析は週3回も継続しなくてはならない治療なので、できるだけ家庭的な環境で医療を提供したいというのが開院時の願いでもありました。
 今井さんはいまい内科クリニックで求めるものとして3つの項目を掲げておられます。
 ①住み慣れたこの町で、いつまでも安心して過ごしていけるように
 ②スタンダードな医療を心がけて、わかりやすい言葉で伝えたい。
 ③難病であっても、毎日の生活の中に「生きがい」を見出せるように援助したい
 クリニックでは、待合室などはフローリングにされ、外光を取り入れて明るい雰囲気にされました。いろいろなアメニテイも考えられたそうですが、最終的には最も有効と思われるのは、自然に始まる患者さんどうしの会話だったそうです。自然な会話ができるためには患者さんが場の雰囲気に和んでおられてこそ可能になりますので、できるだけ安心を感じて寛いでいただけるような配慮を心がけておられます。

 その今井さんが、なぜ開業医として在宅ホスピスケアを始められるに至ったか、次回はその経緯をご紹介致したいと思います。(浦嶋偉晃)

http://www.kunpfukai.com/imai_naika/index.html
→いまい内科クリニック HP