ラベル アットホームホスピス代表・吉田利康さんインタビュー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2009年7月27日月曜日

体験者が綴ったホームホスピスの入門書

  日本のがん患者の80%以上が病院で最期を迎える現状がありますが、住み慣れた家で家族に看取られることは不可能なのでしょうか。奥様を在宅で看取った吉田さんが、体験者としてそのプロセスを伝えた本が、2007年12月に出版された「がんの在宅ホスピスケアガイド―ただいま おかえりなさい」(日本評論社)です。


 世間ではまだ在宅ホスピスケアというと、かなり縁遠いと感じる方も多いと思いますが、今後、終末期を家で迎えようと考える患者の方は増えていくに違いありません。最期を家で迎えようとする患者と家族の視点から、ご自身の体験も踏まえて書かれた本書は、そうした状況にある人なら、悩みの多くの部分に答えてくれる本だと感じました。たくさんある闘病記や患者手記とは全く異なる面持ちを感じました。
  また、吉田さんは在宅医、看護師など医療関係の方々と一緒に「おかえりなさいプロジェクト」を結成され、「あなたの家にかえろう」という冊子を作られました。


  この冊子はすでに24万部以上が発行され、全国でいろいろな方々の手に渡り、在宅ホスピスのガイドブック的な役割を果たしています。

  今回のエンディングセミナーでは、吉田さんの貴重な体験をベースに、本当に家族は「みとりびと」となれるのか、みなさんとご一緒に考えていきたいと思っています。(浦嶋偉晃)        

2009年7月23日木曜日

市民みんなに看取りの力が備わっている

吉田さんから最初に「告知」を受けたときの衝撃を聞きました。医師から告知を受けた瞬間、頭の中は真っ白、膝はガクガクと震え…現在の不用意な「告知」について、改めて考えさせられました。「告知」というのは医師やマスコミが思うほど、簡単なものではありません。告知の前に信頼関係が必要ですが、容赦なく言い放たれる。その一方で「告知」を受けた患者さんや家族がその後、内的に成長していくという側面もあるというのも改めて感じました。
吉田さんが奥様を在宅で介護された期間は17日間。在宅ホスピスケアの驚きは、妻であり母である人が帰ると、家中が一気に明るくなり、家族にもそれぞれ役割が自然に出来て、いきいきしはじめ、それが家での看取りをやり遂げる原動力となるということです。それが家に帰るよさだと感じました。


当時、施設ホスピスはあっても、在宅ホスピスについて、そのような医師がいるのか分からない時代で、結局は家族だけで看取ることも少なくありませんでした。枕元にあるのは、血圧計と体温計と水枕のみ。モルヒネなどは一切お使いになられなかったとお聞きし、不思議に思いましたが、ご本人の思いにいろいろな形があるのでしょう。しかし、痛みに苦しむ奥様と、その奥様を看る吉田さんの辛さは、ここで容易に言葉にできるものではありません。。
死を見つめて、生を見た。それは奥様からの贈り物だったかもしれないと吉田さんはいいます。家という環境だったから、贈り物に気がついた。病院でできることをそのまま家に持ち込んでも、家での看取りと言えないでしょうとも仰っておられました。
もちろん、吉田さんは在宅ホスピスは選択肢の一つで、病院、施設型ホスピスという形も否定はされません。ただその人と環境に合った形を選択すればよいと言われてました。

「男の介護」と言うのは、まだむずかしいかもしれませんが、これからの日本社会が直面する大きな課題のひとつとなるでしょう。吉田さんは、それはけっして無理なことではなく、そのための環境づくり、学びや啓発が必要と仰います。医療関係者が奥様の看取りは「吉田さんだからできた」といわれたそうですが、「市民をなめないでほしい」と反発されたという吉田さんの言葉に共感を感じました。
在宅介護は容易ではありませんが、私たち市民みんなにその力が備わっているのだと思いました。(浦嶋偉晃)  

2009年7月20日月曜日

家庭の看取りの復権

  エンディングセミナー「”みとりびと”は語る」(8月1日)の話題提供者・アットホームホスピス代表の吉田利康さんにお会いする機会がありました。
  吉田さんは、1999年に看護師だった奥様を急性骨髄性白血病で、最期は在宅で看取られました。その時のご体験、そして今後の思いについてお話しをお聞きしました。
 奥様の死後からインターネットでターミナルの方やそのご家族、そしてご遺族の方に心のケアをはじめられ、「もしもこの病気がよくなるのなら、同じ病気の人の話し相手になりたい」といっていた奥様のご遺志を継ぐ為、ルークトーク(白血病談話室)、CTML(キャンサートーク・メイリングリスト)、メモリアルML(白血病遺族談話室)などで、「鉄郎」というハンドルでネットカウンセリングを行なわれました。
 その後、在宅医療にかかわる開業医の方に出会い、ネット外での活動も開始され、日常の視点から、こころのケアを考える講演や執筆活動に取り組んでおられます。



 吉田さんに在宅死についてお話を伺いました。

 昭和54年を境に、病院で迎える最期は在宅死を追い越し、現在全体の80%以上、これは、世界でも他に類をみない現象といいます。その結果、30年ほど前には当たり前であった、家庭での介護や看取りが姿を消し、同様に家族を支援する診療所も徐々に姿を消していき、ごくわずかが残るだけとなっていきました。
逆に、認知症など根治が難しい病気が増え、がんは二人にひとりがかかります。しかし、政府は入院日数短縮を打ち出し、急性期を過ぎた患者さんは嫌でも、転院か在宅療養を余儀なくされます。現実に急性期病院の平均入院日数は2週間に縮まっており、以前のように最期まで病院に留まるところは難しい。
 今、急務なのは家庭介護や看取りの復権です。ここ30年ほど生も死もどっぷり医療に依存してきましたが、元来それらは市民生活の一部でした。吉田さんは、「アットホームホスピス」の場を通して、生活の座から生老病死を見つめなおし、市民の視線から介護・看取りと交流・助けあいを実践していこうと活動を続けておられます。(浦嶋偉晃)