■二人称の死と家族葬
「死の人称論」を説いたのはジャンケレヴィッチだが、日本では作家・柳田邦男が著作「犠牲(サクリファイス)」で述べて、広く一般的になった。一人称は亡くなる本人の視点、二人称は身近な家族や友人の視点、そして三人称がそれ以外の第三者の視点、といわれ、柳田の本は、「二人称の死」の重要性を訴えた。つまり、遺族としての視点を掘り起こした。
葬式はいったい誰のものか。その問いにいろいろな答え方がある。宗教的に言えば、死者を来世へ送ることだが、社会的には死の事実を示して、死者が世帯主である場合は、その承継を地域に対し表明することでもあった。だから、一昔前までの葬儀では、遺族は町内や職場のいろいろな決まりごとを生真面目に順守してきた。遺族の視点(二人称)というより、社会の視点(三人称)が優先されてきたのだ。
最近になって、二人称の死、遺族の視点が強調されてきたのは、葬式の形態の変化とも無関係ではない、と思う。家族葬の普及である。
ここ20年ほどの間、伝統とされてきた葬送がリストラされて、いろいろな葬法が登場してきたが、中でも家族葬はすっかりスタンダードになった。外から会葬者を招かない、身内だけで親密な別れを告げるコンパクトな葬式は、死の視点から考えれば、従来になく死者と遺族の距離を近づけた。深い人間関係を結んできた親密感を、切り裂かれるような喪失感、悼み、悲嘆が隠しようもなく露わになる。私の印象だが、社会的な儀礼性が後退した分、家族葬はグリーフ(死別の悲嘆)の感情を浮き彫りにしたと言えるのではないか。
最近、このグリーフという言葉の浸透が著しい。グリーフサポートとかグリーフワークという考え方は遺族を中心としているが、日本の葬式もまた遺族という二人称の視点からその意味を問い直されようとしている。
■遺族の不在、という問題
年間114万人が亡くなる現在の多死社会は、その意味では多くのグリーフを背負う時代でもある。たいせつな人の死をどう受け入れ、どう送るか---それは日本人が独自の歴史と文化の中で育んできた遺族の精神史とも重なるが、ここにも変化の兆しが見て取れる。
NHKが1月に「無縁社会」を報道して話題となった。日本には、身元不明の、遺体引き取りを拒否される人が1年間に3万人以上いるという事実。単身世帯の急増は、将来の無縁死や孤独死の増を示唆しているのかもしれないし、別の言い方をすれば「遺族の不在」という深刻な事態が迫ってきている。俗世のつながりが分断すれば、死者と遺族の関係も歪が生じる。そもそも少子化が加速して、死後の継承者が縮小しているので、「遺族なき供養」という問題は、どの寺院でも逼迫した課題であるはずだ。永代供養墓の普及はその証拠だし、究極の選択は、遺族がいても、葬式をしない「直葬」だろう。首都圏では、葬儀全体の3割を占めるという。多死社会において、いったい供養の担い手とは誰なのか。
グリーフという遺族の内面にかかわる問題が生起する一方で、「遺族の不在」という社会的な現象が立ちはだかる。そもそもグリーフの主体者とは誰なのか。遺族なき時代が到来する中、死別の悲しみはどう支えられ、死者をどう悼んでいくのか。
■グリーフサポートとしての葬送
墓、葬式など葬送儀礼、あるいは僧侶という存在は、長い歴史を通して、死別の悲しみを支える作法を伝えてきた。かつての大家族、長男世襲の時代ではそれは至極当然の生活文化であったから、とりたててグリーフという問題が取り上げられたこともなかった。しかし、家族が多様化して、遺族が急速に変容する今、葬式仏教も制度疲労を来し、逆にその間隙を縫ってグリーフの観点が浮上してきた。
確かにこれまで通りの葬式仏教は後退するだろう。しかし、ある意味でグリーフを核とした新たな葬式の再構築が始まる、これは転機なのかもしれない。「一人では弱い存在である人間が死別と向き合ってとき、誰かに支えてもらうことで生きるために必要な力を得る時間や場所として葬儀がある」(橋爪謙一郎)ならば、グリーフサポートとしての葬送の役割を、いま真剣に考えるべき時が来ているのではないか。それは同時に、儀礼の執行役であった僧侶の役割をも問い直すものとなるだろう。
今回のエンディングセミナーでは、3人のゲストの活動を通して、グリーフサポートとしての葬送について考えてみたい。(秋田光彦)
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大蓮寺・應典院 夏のエンディングセミナー2010
「遺族」をどう支えるか~グリーフサポートとしての葬送~
第1回 7/10(土)14:00~
應典院寺町倶楽部「寺子屋トーク第58回」
遺族と<墓友>たち~「人生の最期」にこだわる仲間たち~
会場:應典院 <閉会16:30>
井上 治代さん(NPO法人エンディングセンター代表・東洋大学教授)
対話:秋田光彦 司会:出口久美さん(NPO法人遺族支え愛ネット)
[オンライン予約]
http://uemachi.cotocoto.jp/event/40689
参加費 :一般1,500円・應典院寺町倶楽部会員・学生1,200円
*なお、同日、大蓮寺のエンディング奨励事業「自然賞」授賞式を併催します。
第2回 7/18(日)14:00~
遺族サポートとお葬式~グリーフでつながる~
会場:大蓮寺 <閉会16:00>
橋爪 謙一郎さん(株式会社ジーエスアイ代表取締役)
対話:秋田光彦
[オンライン予約]
http://uemachi.cotocoto.jp/event/40690
参加費 :一般1,000円・應典院寺町倶楽部会員・学生800円
第3回 7/25(日)14:00~
自殺遺族と仏教~自殺問題に取り組む僧侶たち~
会場:大蓮寺 <閉会16:00>
藤澤 克己さん(自殺対策に取り組む僧侶の会代表・浄土真宗本願寺派安楽寺副住職)
対話:秋田光彦
[オンライン予約]
http://uemachi.cotocoto.jp/event/40691
参加費 :一般1,000円・應典院寺町倶楽部会員・学生800円
主催:大蓮寺・エンディングを考える市民の会、應典院寺町倶楽部
共催:浄土宗大蓮寺、應典院
助成:公益財団法人JR西日本あんしん社会財団
協力:NPO法人遺族支え愛ネット、Live on、NPO法人エンディングセンター
<各回ともインターネットで直接申込が可能です>
10日:http://uemachi.cotocoto.jp/event/40689
18日:http://uemachi.cotocoto.jp/event/40690
25日:http://uemachi.cotocoto.jp/event/40691
<事前の準備状況は大蓮寺のブログで紹介!>
http://mitoribito.blogspot.com
問合せ 應典院寺町倶楽部(おうてんいんてらまちくらぶ)
543-0076 大阪市天王寺区下寺町1-1-27 TEL 06-6771-7641 FAX 06-6770-3147
電子メール info@outenin.com ホームページ http://www.outenin.com
2010年7月5日月曜日
2009年6月7日日曜日
エンディングセミナーの開催概要が決まりました!
大蓮寺・エンディングを考える市民の会が、毎年夏に開催している「エンディングセミナー」の今期分のプログラムが決定しました。
今回の企画では、死の臨床に立ち会う3人のゲスト(葬祭専門業者、訪問医、家族)を招き、それぞれの体験を通して、いのちを支えることの意味を考えます。毎回の聞き手は、本会の代表で、大蓮寺・應典院住職の秋田光彦さんが担当します。
<以下、転送歓迎です>
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夏のエンディングセミナー
”みとりびと”は語る
〜死と家族をめぐる3つの物語〜
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最新情報は特設ブログにて!
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http://mitoribito.blogspot.com
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2009年7月18日・7月25日・8月1日
【3回連続・いずれも土曜日】
映画「おくりびと」の大ヒットは、日本人にとっての死と家族の関係について改めて想い起こさせました。しかし、映画とは違い、実際の死の風景、とりわけ末期から死、死後のプロセスは、家族には知られざる世界であり、心身ともに大きな重圧がかかります。
年間110万以上の人が亡くなる多死社会の日本において、家族とはもはや死の臨床といってよいはずですが、そのための環境や人材、作法など、その基盤はけっして充分なものとはいえません。
遺族会、在宅ホスピス、そして家族による看取り…死と家族をめぐる3つの物語に学びながら、いのちを支えることの意味をともに考えます。
会場■應典院(おうてんいん)
大阪市天王寺区下寺町1-1-27
電話06-6771-7641
地下鉄谷町線「谷町九丁目」駅(3)番出口、
近鉄・千日前線・堺筋線「日本橋」駅(8)番出口、
それぞれ徒歩8分
(※両駅ともエレベーターが設置されています)
お申し込みはインターネット、ファクシミリ(06-6770-3147)、お電話(06-6771-7641)にて。
参加費■800円(茶菓付)(予約優先制)
《各回とも定員40名。定員になり次第、締め切ります》
お申込■インターネットの「上町台地.cotocoto」(http://uemachi.cotocoto.jp)からご希望の回を選んでお申し込み下さい。
主催■大蓮寺・エンディングを考える市民の会
共催■大蓮寺、應典院寺町倶楽部
協力■上町台地からまちを考える会、cocoroom、むすび
------------------------《話題提供者》------------------------
○7月18日(土)
14時開会(閉会16時)
ゲスト:廣江輝夫 さん(公益社執行役員)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30444
------------【聞き手・秋田の視点】------------
廣江さんは葬儀専業最大手・公益社で葬送事業の最先端の開発に取り組む仕掛け人です。早くからエンディングサポート企画を手がけ、とくに遺族支援「ひだまりの会」を設置して、グリーフケアの普及に取り組まれました。「死後」を扱う葬儀社が「生前」を扱うことで何が見えてきたのでしょうか。映画とは一味違う「おくりびと」の声です。
○7月25日(土)
15時開会(閉会17時)
ゲスト:今井信行 さん(いまい内科クリニック院長)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30445
------------【聞き手・秋田の視点】------------
今井さんは宝塚市のクリニックの院長として、地域 に根づいた医療の実践に取り組んでこられました。 「住み慣れた自宅で、最期まで」という、患者の願いに沿うように、在宅医療に取り組み、 昨年には在宅療養支援をめざして、通所介護施設を開所、 医療と介護の両面から、「地域居住」を支援されています。
○8月1日(土)
14時開会(閉会16時)
ゲスト:吉田利康 さん(アットホームホスピス代表)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30446
------------【聞き手・秋田の視点】------------
吉田さんは、99年に白血病で最愛の奥様を自宅で看取られました。その体験を契機に、インターネットでがん患者さんやその家族、遺族と交流を始め、医療現場にも、市民の観点から積極的な発言をしておられます。昨年「がんの在宅ホスピスケア」を刊行、最後のみとりびと「家族」の心境を綴っておられます。
------------------------《聞き手(各回とも)》------------------------
秋田光彦(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
55年大阪市生まれ。大蓮寺・エンディングを考える市民の会代表。パドマ幼稚園々長も兼ねる。97年に塔頭寺院「應典院」を再建し、地域での社会的・文化的活動の拠点に開放。また、新しい葬送のかたちを探して、02年には大蓮寺墓地に生前契約個人墓「自然」及び永代供養墓「共命」を建立。
最新情報は特設ブログにて!
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http://mitoribito.blogspot.com
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今回の企画では、死の臨床に立ち会う3人のゲスト(葬祭専門業者、訪問医、家族)を招き、それぞれの体験を通して、いのちを支えることの意味を考えます。毎回の聞き手は、本会の代表で、大蓮寺・應典院住職の秋田光彦さんが担当します。
<以下、転送歓迎です>
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夏のエンディングセミナー
”みとりびと”は語る
〜死と家族をめぐる3つの物語〜
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最新情報は特設ブログにて!
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2009年7月18日・7月25日・8月1日
【3回連続・いずれも土曜日】
映画「おくりびと」の大ヒットは、日本人にとっての死と家族の関係について改めて想い起こさせました。しかし、映画とは違い、実際の死の風景、とりわけ末期から死、死後のプロセスは、家族には知られざる世界であり、心身ともに大きな重圧がかかります。
年間110万以上の人が亡くなる多死社会の日本において、家族とはもはや死の臨床といってよいはずですが、そのための環境や人材、作法など、その基盤はけっして充分なものとはいえません。
遺族会、在宅ホスピス、そして家族による看取り…死と家族をめぐる3つの物語に学びながら、いのちを支えることの意味をともに考えます。
会場■應典院(おうてんいん)
大阪市天王寺区下寺町1-1-27
電話06-6771-7641
地下鉄谷町線「谷町九丁目」駅(3)番出口、
近鉄・千日前線・堺筋線「日本橋」駅(8)番出口、
それぞれ徒歩8分
(※両駅ともエレベーターが設置されています)
お申し込みはインターネット、ファクシミリ(06-6770-3147)、お電話(06-6771-7641)にて。
参加費■800円(茶菓付)(予約優先制)
《各回とも定員40名。定員になり次第、締め切ります》
お申込■インターネットの「上町台地.cotocoto」(http://uemachi.cotocoto.jp)からご希望の回を選んでお申し込み下さい。
主催■大蓮寺・エンディングを考える市民の会
共催■大蓮寺、應典院寺町倶楽部
協力■上町台地からまちを考える会、cocoroom、むすび
------------------------《話題提供者》------------------------
○7月18日(土)
14時開会(閉会16時)
ゲスト:廣江輝夫 さん(公益社執行役員)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30444
------------【聞き手・秋田の視点】------------
廣江さんは葬儀専業最大手・公益社で葬送事業の最先端の開発に取り組む仕掛け人です。早くからエンディングサポート企画を手がけ、とくに遺族支援「ひだまりの会」を設置して、グリーフケアの普及に取り組まれました。「死後」を扱う葬儀社が「生前」を扱うことで何が見えてきたのでしょうか。映画とは一味違う「おくりびと」の声です。
○7月25日(土)
15時開会(閉会17時)
ゲスト:今井信行 さん(いまい内科クリニック院長)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30445
------------【聞き手・秋田の視点】------------
今井さんは宝塚市のクリニックの院長として、地域 に根づいた医療の実践に取り組んでこられました。 「住み慣れた自宅で、最期まで」という、患者の願いに沿うように、在宅医療に取り組み、 昨年には在宅療養支援をめざして、通所介護施設を開所、 医療と介護の両面から、「地域居住」を支援されています。
○8月1日(土)
14時開会(閉会16時)
ゲスト:吉田利康 さん(アットホームホスピス代表)
【お申し込み】http://uemachi.cotocoto.jp/event/30446
------------【聞き手・秋田の視点】------------
吉田さんは、99年に白血病で最愛の奥様を自宅で看取られました。その体験を契機に、インターネットでがん患者さんやその家族、遺族と交流を始め、医療現場にも、市民の観点から積極的な発言をしておられます。昨年「がんの在宅ホスピスケア」を刊行、最後のみとりびと「家族」の心境を綴っておられます。
------------------------《聞き手(各回とも)》------------------------
秋田光彦(浄土宗大蓮寺・應典院住職)
55年大阪市生まれ。大蓮寺・エンディングを考える市民の会代表。パドマ幼稚園々長も兼ねる。97年に塔頭寺院「應典院」を再建し、地域での社会的・文化的活動の拠点に開放。また、新しい葬送のかたちを探して、02年には大蓮寺墓地に生前契約個人墓「自然」及び永代供養墓「共命」を建立。
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