2010年5月15日土曜日

いのちのエナジー 現代の寺子屋を求めて(5)坊さんも、大志を抱く

 「ボーズ・ビー・アンビシャス」。どこかで聞いたことがありそうな言葉だが、誤植ではない。そう、これは「青年よ、大志を抱け」をもじり、「お坊さんよ、大志を抱け」とされたスローガンなのだ。使い始めたのは、東京・港区にある青松寺。伝統ある曹洞宗のお寺で、宗門以外の講師を招いて始めた「仏教ルネッサンス塾」の上田紀行塾長(東京工業大学大学院准教授)のもと、僧侶たちが自らの問題を語り合う場がボーズ・ビー・アンビシャスである。
 去る3月9日、大阪市下寺町の應典院にて、ボーズ・ビー・アンビシャス、通称BBAの関西での第1回が開催された。きっかけは、既に7年13回にわたり開催されてきた東京での会に、関西方面から何度も参加してきた僧侶がいたことだった。そして、昨年7月20日に準備会が発足し、16人の仲間たちとともに、実現に向けて取り組んできた。結果として、63人の僧侶らによる激論の場が生まれた。BBAを知る人も、知らない人も、カミングアウトや自己宣言をする機会を得たように思う。
 ただ、開催にあたって事務局を務めさせていただいた側としての率直な感想は、「集まり、語ることに満足をしていないか」ということである。言葉を選ばずに言えば、「いけてるお坊さん」を装ったところで、それぞれの寺院が抱えている問題は、いっこうに解決を導き出すことはできないのだ。もちろん、こうして集い、考える場が無意味だとは言っていない。要するに、集い、考えたものを、どのように自らの生き方、すなわち現場に重ねていくのかが、決定的に重要なのである。
 宗教学者の島田裕巳さんの『葬式は、要らない』では、日本仏教を「墓参り教」と指摘する。今、行動する仏教者が受け止めるべきは、こうして家族が遺族になった後から、関係を維持・発展させてきたことではないかと思う。仏教者は、仏教ファンを増やすことや寺院経営のサポーターを増やすことだけに注力すべきではない。そう、檀信徒の方々と共に、今の時代を生き抜いていかねばならないのだ。
 ちなみに、BBA関西の議論は、はやりのツイッターで「中継」させていただいた。すると、会場で紡がれた言葉を、宗教者以外によってつぶやき直されることがあった。ここに、仏教の言葉は、今の時代にも響く可能性を持っているはずと会心した。だからこそ、仏教を説きながら、その言葉を届ける「あなた」に寄り添い、共に生きていく大志を抱きたい。(山口洋典)

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