2009年8月9日日曜日

日本人と『死の準備』~これからをより良く生きるために

 本書は2部構成となっていて、第1部が山折氏、第2部には浄土宗総本山知恩院発行機関誌『知恩』と佛教大学四条センターの共同企画、よく生きるための『死の準備』講座から6人の講演を採録、という構成になっています。第1部では、宗教学者である著者が、人生80年時代の死生観を説いています。
 人生50年時代、「生と死を同等の比重で考える人生観」が、急激な高齢化の中で、人生80年時代となり、「老いと病いの領域が肥大化して死のテーマを遠く押しやり覆いかくしてしまった」と山折氏は言います。
 「死」というものの実感が遠ざかるほどに、「生」に対する感覚も薄れていくのは、いろいろな学者が提言していることですが、近年の親殺し子殺し、無差別殺人などの多発、また臓器移植問題を通じて様々な問題定義をする著者ですが、根底には「死生観」の欠如を語っているように思います。
 葬送の現場に立ち会う立場の実感としても、枕経から始まる一連の儀式が、単なるセレモニー化となっており、「死」を見えにくく、感じにくくしているという感を持ちます。我々の立場からそれを遺族はもとより、参列する方々にとって、「死」と向き合う大切な経験とするにはどうしたらよいのか、僧侶として考えるべき大きなテーマをいただいたように思います。
 第2部の6人の方々の講演の採録も、それぞれの立場から「いかに生き、いかの死ぬのか」を語られています。
 豊かさとひきかえに失った大切なものは何なのか、本を読み終え、地域の中で語り合っていきたいと思いました。
(池野亮光)

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