タイの開発僧の研究で著名な櫻井義秀さんの新潮新書の新刊。
かなりエグいタイトルですが、本旨は「スピリチュアル・ビジネの構造」の副題の通り。「霊感商法」といえばダークなイメージに覆われていたが、「スピリチュアルビジネス」といえば明るさや軽やかさに転化されるような。有名な「すぴこん」(スピリチュアルコンベンション)の紹介もくわしくあります。
本書のあとがきにもあるように「無宗教を自認し、確たる死生観もなく、宗教が社会の公的生活に浮上することをタブー視してきた日本において、カルトやスピリチュアリティ・ブームをどう認識し、対処してよいのか分からない人」にとっては、ある種のガイドブック的な役割もあるでしょう。いかにスピ・ビジネスの罠にかからないか、その具体的な対処法も興味深いものがあります。
スピ・ブームは、90年代の大不況以降、社会の不安定化が進行して、心身のストレスや不安を和らげるものを自前で調達しなくてはならない時代のあだ花として発生しました。一言いえば「自分癒し」。「自己責任」「自己決定」の波に追い込まれ、萎縮していく個の存在をあやふやな感性の中に棚上げするシステムともいえます。
同時代に生まれた應典院も、ひょっとして同じ「自分癒し」のブームの中に位置づけられるかもしれません。けれど、絶対的に違うのは、應典院が軸足とする「場」「身体」「関係」のリアリティが、スピ・ブームにはない(というか巧妙に避けられてる)という点。他者や世界と出会うために、特別な観念や技法の力を借りずとも、腹の据わった関係性に「個」を打ち立てる以外にないと思います。
なお、第3章「宗教と金の関係」はちょっと蛇足だったかも。宗教の経済観というマジメな観点からいえば、集英社新書の「宗教の経済思想」が適当ですので、こちらをおススメしておきます。
(秋田光彦)
2009年6月17日水曜日
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