2009年7月6日月曜日

BOOKガイド 「寺よ、変われ」

 京都府城陽市の寺の住職です。このブログの主旨に賛同し、これから参加をさせていただきたいと思います。
 最近、「寺よ、変われ」というタイトルの本が出版されました。著者の高橋卓志さんとは以前から面識があり、長野県の臨済宗・神宮寺の住職として、「お寺は地域に開かれたものであるべき」との信念のもとに、デイサービスやNPO活動などを行い、そのアイデアと熱意あふれた行動力には学ぶことばかりです。
 この本は、「形骸化した葬儀と法事を続けるだけなのか?」、帯に書かれた言葉の通り、葬式仏教と揶揄される現状の仏教寺院、僧侶へ警鐘を鳴らす内容が展開されています。今までも仏教学者の方々が、伝統仏教、寺の現状を憂う内容ものはあまた出版されていますが、当事者である僧侶が書かれたものであるだけに、同じ立場にあるものとして、より深く受け止めるところがありました。
 かくいう私の僧侶としての活動の大半は法事と葬儀。仏教のいう四苦「生」「老」「病」「死」の「死」、それも死にゆく場面でなく、死後に関わること、さまり葬式仏教にどっぷりとつかっているのが現状です。
 「寺と僧侶は、死者だけを相手にするのでなく、現に生きて『苦』をかかえている人の支えや助けにならねばならない」というのが高橋師の行動の原点です。本書の中に「寺院改革ベスト5」というアンケート結果を紹介していますが、①お寺は今日の生き方を教えてほしい、②寺院を地域に開放しよう、③僧侶の所行(おこない)を正せ、④檀家制度は改革すべき、⑤葬儀・仏事のやり方に工夫を……。この結果、多くの僧侶は敏感に感じ取っているはずなのに、知らないふりをしていると感じるのは私だけでしょうか。かくいう私も、寺を改革するにはまだまだなのですが……。

 本書に語られる寺が変わる道筋は、幅広く読んでいただきたいものです。寺は本来そこに住まう住職(その家族)のものだけではなく、それを支える方々のものであるはずです。寺が変わるには、双方の協力なくしては難しいものでしょう。寺に、住職に対する期待を本書をヒントに菩提寺の住職に投げかけることで、寺が変わるきっかけとなるのかもしれません。(池野亮光)

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