2009年9月9日水曜日

シンポジウム「今を生きる力~激動の時代をホリスティックに生きる~」大下大圓さん

  去る9月6日、日本ホリスティック医学協会のシンポジウム「今を生きる力」に参加しました。大下大圓さん、帯津良一さん、上田紀行さん、五木寛之さんという豪華な方々が講演されましたので、会場は満杯の盛況ぶりでした。4人の方々のそれぞれのお話を、講演順に従ってご報告していきます。

  最初の講演は飛騨千光寺住職の大下大圓さんから「仏教とスピリチュアルケア~縁生から覚醒へ」のご講演をお聞きした。大下さんは、和歌山県の高野山 で修行し、スリランカ国へ留学、スリランカ僧として得度研修され、飛騨で約25年前より「いのち、生と 死」の学習会として「ビハ-ラ飛騨」を主宰、その一方で患者さんのベッドサイドなど医療の現場や青少年育成、まちづくりでのボランティア活動も続ける。また千光寺で「人間性回復や心のケア」に関する様々な瞑想 研修を手がけ、医療、福祉、教育における「スピリチュアルケア」や「ケアする人のケア」を探究している。


 まず大下さんの僧侶としての立場から、スピリチュアルケアについてのお話があった。
 今、日本の精神文化としてのスピリチュアリティの研究やスピリチュアルケアのあり方が問われている。日本人の精神的な背景を考えるなら、儒教や道教、とりわけ日本人の生き方に多大な影響を与えた仏教の思考や叡智が生かされることが重要である。その中心となるのが「縁」の思想であり、「縁生」とは「縁起によって生じたもの」の意である。
  スピリチュアルケアとは「スピリチュアルペインを心の内に持ち、あるいは訴えようとするケアの対象者に対して、ケアを提供する側(援助者、スピリチュアルケアワーカー、セラピストなど)が共にその実態を『三つの縁生=自縁、他縁、法縁』から明らかにして、苦悩からの開放、解脱に至る営み」であると言える。臨床場面で「縁生」を考えるならば、まず人間存在として援助される存在や、援助する存在そのものが縁生と言える。医師や看護師がどんな患者さんやご家族と出会うかということは、深い「ご縁」以外のなにものでもないことである。
  大下さんは住職という立場でありつつ、病院で医師や看護師とチームを成して患者さんやご家族に寄り添う活動を通して、ベッドサイドで何が見えるか、治療期の心のケアについて深く携わっている。私自身、ここに深い興味を惹かれる。仏教におけるスピリチュアルケアとは、患者さんのベッドサイドでどのような役目をし、患者さんの心にどう寄り添っていけるのかについて、できれば具体的なことをもう少しお聞きしたかったと思う。
  大下さんは最後に、仏教におけるスピリチュアルケアとは、その人自身が自らの人生を統合することを援助する、つまり人生の苦悩への解決のプログラムを発見させられることをサポートすることだと言われた。
  
  正直、今回、勉強不足の私にとっては難しい話だったが、自分らしくどう生きたいのか、またどう死にたいのか日頃から考えていくことが大切であると感じた。毎日生きている中で、いろいろな楽しみ、苦しみがあるが、本当に「心」が喜ぶこと、「魂」が喜ぶことをしているかを常に自問自答しながら生きたいと思った。「<念>とは今の心と書くが、ありのままの今という時間において、自他のことを直感的に洞察することが仏教的なスピリチュアルケアの態度」と言った大下さんの言葉が印象的にだった。
  やはり思ってた通り、仏教とスピリチュアルケアはとても奥が深い領域であった。とても興味深く内容で、今後も勉強を続けたいと思う。(浦嶋偉晃)

2 件のコメント:

  1. 浦嶋さんこんばんは

    スピリチュアルケアって、絡まった糸をほどく作業にも似ているように思えます。いっぺんに解こうとしても糸は絡まるばかりです。ほどける部分からゆっくり、あっちを引っ張り、こっちを引っ張り解いていく。

    病院で時間に追われる看護師は、その作業をするのに十分な余裕がない場合があります。

    苦悩はその人の経験や癖によってそれぞれ違うものだと思います。私が訪問看護師として心掛けていることは、その人の足跡から答えを導き出して、その方にお伝えするということです。自分の口から出た言葉でも人の口を通して自分の耳に入ることで再発見することもあります。ケアという言葉は難しいけど、絡まった糸を一緒に解く作業と考えれば、ちょっとはわかったような気にもなります。

    頑張りすぎず、気楽に気長にのんびりと。相手の歩幅に合わせるのも大事なことですね。

    返信削除
  2. 甲斐さん、こんばんは

    有難うございました。
    日々、患者さんと接しておられる甲斐さんの言葉はすごく重みを感じます。
    甲斐さんの言われる通り、苦悩はその人の生きてきた人生によって違いますよね。教科書やマニュアルはありませんよね。でも甲斐さんのように、「患者さんの足跡から答えを導き出して、その方にお伝えするということです。自分の口から出た言葉でも人の口を通して自分の耳に入ることで再発見することもあります。」という事をお聞きすると、市民としては安心します。
    そうですね、気楽に、相手の歩幅に合わせるというのは大事ですね。
    勉強になりました。有難うございました。

    返信削除