2009年7月8日水曜日

末期患者さんを支える人々 傾聴ボランティア

 7月4日、尼崎で開催された「阪神ホームホスピスを考える会」に参加してきました。
 ゲストとしてお話をお伺いしたのは、海外でのボランティア経験を活かし、現在はホスピスで傾聴ボランティアをされている薬剤師の石田有紀さんでした。
 石田さんは1回、原則1時間で患者さんとお会いになられていますが、なぜ患者さんは、このような短い時間で、ご家族にも医療関係者にも言えない思いを、見ず知らずの「他人」に話されているのか?
 やはり初対面でいきなり話がはずむような事はないそうです。また、患者さんの訴えがいつも本心とは限らず、口から出た一言をもう少し聞き込むと、背景に違う思いや願いのあることが多く、たいへんなご苦労もあるといいます。しかし家族や医療関係者にも言えないような事を、「これは誰にも言えないんだけど」ともらされることがあるそうです。
 患者さんはすごく周りに気を使っていておられます。家族は一所懸命お見舞いに来てくれる、医師も看護師も熱心にケアしてくれる・・・そんな時に「自分はつらいんだ」とは言いにくいのです。「他人」だから言える話がある。だからといってそれが家族や医療関係者に伝わることもないし、何を言っても迷惑がかからない。自分の立場が悪くなることもない。そんな安心感のようなものがあるのではないでしょうか、と仰っておられました。関係性が深くないから、逆に本音が言えるのかもしれません。
 傾聴の大原則に、「相手が発した言葉を使って、再び問い返す」とありますが、患者さんから「くどい!」と言われることもあり、また患者さんがお話の間を置いたときに、それが体調が辛いのか、考えている間なのかを常に気をつけられているといいます。実際に体験された方だからこその感覚かと思います。また患者さんの人生のお話を聞いていると目の前に映像がプレビューされて、自分とは全く違う生き方がリアルに迫ってくるそうです。どんなフィクションにも描けない、真の人生の物語ではないでしょうか。



 傾聴ボランティアとは、患者さんの心を癒し、孤独感や不安が軽減して安心感につながり、また相手の隠れた思いを聴くことで本当の援助が可能となります。
 ここにも、末期患者さんの心に寄り添い、支える人がいました。(浦嶋偉晃)

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