6月9日、京都の浄土宗宗務庁で「第1回浄土宗平和賞」の授賞式がありました。浄土宗平和協会が今年から創設した賞で、社会参加仏教を実践する浄土宗教師を顕彰するのが趣旨です。11名の候補者から晴れの第1回受賞者に選ばれたのは、ビハーラ僧の大河内大傳さん(30歳)。大阪市内の浄土宗寺院願生寺の副住職です。
ビハーラとは、仏教の原意では「休息の地」を表しますが、これが転じて今はホスピスに対する仏教の言葉として使われています。最近は僅かながら、医療現場に出向いて患者さんのケアに当たる僧侶も出始めました。大河内さんも、かつて新潟の緩和ケア病棟で1年間、ビハーラ僧として多くの末期患者さんと向き合ってきた経験を持ちます。
その後、大阪に戻って、2003年、宗派を超えた仲間たちとNPO法人ビハーラ21を発足させ、ビハーラについての人材育成や現場派遣などを始めました。このNPOは、さまざまな宗派の宗教家(神主さんもいます)と医療者、福祉者がメンバーとなっており、宗派とか専門職といった壁を乗り越えて、開かれた活動に取り組んでこられました。ビハーラ僧育成の受講者はすでに100名を超えています。大河内さんはいまも理事のひとりとして、事務局運営の中心を担っています。
「社会参加仏教」というと勇ましいフレーズに聞こえますが、大河内さんの活動に特別な理念や周到な計画があったわけではありません。むしろひとりの僧侶として自分に何ができるのか、といった真摯な問いが、まず臨床に向き合い、また仲間と出会わせる契機となったのではないでしょうか。名高い実績だけが人物を評価するのではありません。まだ若い大河内さんですが、深い求道心を備えた彼の人徳は、ひとりの僧侶の生き方の可能性を指し示していると感じました。
ビハーラを架け橋として、仏教と医療・看護の交流が進んでいくのかもしれないと、ほのかな希望を感じました。
↓ビハーラ21のホームページです。
http://vihara21.sub.jp
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ビハーラということばを初めて聞きました。死者に寄り添う宗教者と言えば、キリスト者の方ばかりと思っていました。私は家が仏教なので、仏教者の皆さんの活躍がこうした場面で見られると心強いです。またいろいろ紹介いただけるのを楽しみに待っています。
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